
「地震大国」といわれる日本。関東から九州の広い範囲で強い揺れと高い津波が発生するとされている南海トラフ地震では、今後30年以内に発生する確率が70%と高い確率で発生が予測されています。
そこで新築で家を建てようと検討している方は、耐震性能や等級について理解して対策することが重要です。
今回は耐震性能の指標である耐震等級について基本的に知っておきたいポイントをご紹介します。

なぜ耐震が必要なのか

1995年の阪神淡路大震災は、多くの建物の倒壊だけでなく、たくさんの犠牲者を出しました。あれから30年たった現在まで、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震をはじめ、震度7を記録した大規模地震は5回、震度6以上の地震は36回発生しています。(気象庁発表「日本付近で発生した被害地震(平成8年以降)による)
高い確率で起こると言われている大規模地震を前に、私たちはまず自分たちの住まいに注目し、地震に耐えうる住宅を作ることが大切です。
阪神淡路大震災をうけ、政府は2000年に建築基準法を改正しました。それまで鉄骨造とRC造と比較して地震に弱いとされていた木造建築も構造の見直しがされ、どの工法で建てた場合でも耐震性への不安を抱く必要はなくなってきています。
免震・制震と耐震の違いは?
耐震と似た言葉に、免震と制震があります。
耐震は、建物を補強および強化し揺れに耐えることを指します。
それに対して「免震」は建物とその基礎の間に免震装置を入れ、建物を地震から守ります。
地震が発生した際に免震装置で揺れを受け流し、地盤の揺れを建物そのものに与えにくくすることで、建物の崩壊を防ぎます。
一方、「制震」はダンパーなど制震部材を組み込み、地震の揺れを吸収し抑える仕組みです。
耐震は法律によって最低限の基準が定められていますが、免震、制震と耐震は法的に義務化されたものでないのが大きな違いです。
耐震等級とその判断基準

耐震等級とは
2000年建築基準法改正と同時に制定された法律に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」というものがあります。
これは、施主(住宅の購入者)がその住宅の耐震性能をはかる指標として耐震等級を定め、自身が購入する住宅の耐震性能の判断基準として使用されています。
等級は建築基準法の耐震性能を満たす水準を3つの等級で表し、現在も耐震性能の指標として使用されています。これから新築住宅を検討している方は、この耐震等級のどれかを満たした住宅を建てる必要があります。
耐震等級を決める4つの要素
①建物の重さ
耐震性能はは建物全体の重さが関わってきます。
木造、鉄骨造、RC造などの構造によって住宅の重さは変化します。
建物が重くなればそれだけ地震が発生した際の揺れ幅や、衝撃が大きくなり、反対に建物が軽ければ、揺れ幅や衝撃は小さくて済むと考えられます。
日本の住宅では、特に瓦屋根のような重い屋根は地震の影響を受けやすいと言えます。耐震に配慮した屋根材をはじめ、軽量かつ強固な建材を使用することが耐震のために重要です。
②基礎や床の耐震性
耐震性を上げるためには軽量というだけでなく、建物を支える基礎や床部分の耐震性も重要です。
基礎には建物にかかる力を地面に伝える役割があります。
そのため、脆弱な基礎では、建物を支える力が弱く、どれだけ建物の構造を強固にしても壊れやすくなるのです。基礎や床でしっかりと支えることができないと、地震が発生した際に、建物が大きく歪む危険があります。
基礎や床の補強は耐震性能を強化する上でも重要です。
③耐力壁や柱の数を増やす
耐力壁とは、地震や風などで受ける横からの揺れによる力に抵抗し変形を防ぐために使用される壁のことです。耐力壁が多ければ多いほど、耐震性は高まります。
そのため耐震等級を上げるのであれば重視する必要があります。また筋交いを入れたり、構造用合板を入れることで横からの力に対抗することができます。
一方柱は、縦方向の振動による力に抵抗します。地震の揺れは横だけでなく、直下型地震のように縦に揺れることも考えられます。
そのため、縦と横からの振動による変形を防ぐためにも壁や柱が多い方が耐震性能も向上するといえます。
④耐震に必要な設備の配置
主に壁や柱のことを指します。いくら耐震性能が高いからと、耐力壁と柱をたくさん使用しても、それぞれの設備の効果を最大限発揮することにはなりません。
配置に偏りがあれば、逆に耐震性能を下げることにもつながるため、それぞれの配置はとても重要です。
そのため、生活のしやすさと耐震性能の両軸で考えながら、効果的な耐震性能を向上する配置と間取りの検討が大切です。
3つの耐震等級

耐震等級1
「耐震等級1」は、耐震性能の中で一番低い等級となります。
低いと言っても、建築基準法で定められた基準を満たす耐震基準と同等の基準であり、これから建てる住宅は最低でもこの耐震等級1を満たした住宅であることが求められています。耐震等級1は一般住宅で備えておきたい最低限の耐震性能として考えられています。
具体的な条件として、
・「数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)に対して、倒壊・崩壊しない」
・「数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)に対して、損傷を生じない」
程度の構造であることが基準とされています。
耐震等級の基準の範囲では、近年頻繁に起きている震度5強の地震で発生した損傷については許容されていると解釈できることは注意が必要です。
地震が起こった後に補修が必要になったり、大きな損傷があった場合には建て替えが必要になる可能性も考えられます。
耐震等級2
耐震等級2は、等級1の1.25倍の耐震性能を持つ住宅を表します。
具体的な条件として、
・「数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)の1.25倍の力に対して、倒壊・崩壊しない」
・「数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)の1.25倍の力に対して、損傷を生じない」
程度の構造であることが基準とされています。
一般住宅よりも強固な建築物、例えは災害時の避難施設になる学校などの公共施設や病院は耐震等級2の基準を満たしている必要があります。
耐震等級3
耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の耐震性能を表します。
具体的な条件として、
・「数百年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度6強〜7相当)の1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊しない」
・「数十年に一度程度発生する規模の地震による力(東京における震度5強相当)の1.5倍の力に対して、損傷を生じない」
程度の構造であることが基準とされています。
災害時に対応の基幹となる警察署や消防署は耐震等級3の基準を満たしている必要があり、耐震等級2の公共施設や病院よりもさらに高い耐震性能を求めれられています。
熊本地震であらためて耐震等級3の住宅の性能の良さが見直される
国土交通省の調査によると、2016年4月に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、住宅性能表示制度(平成12年6月~)を利用した木造住宅のうち、耐震等級1あるいは昭和51年以前に建てられた住宅の損傷が激しい一方、耐震等級3にあたる建物の9割近くが無被害であり、大きな損傷は見られなかったという結果が発表されました。
このことからも、一般住宅であっても耐震等級の高さは重要であることがわかります。
住宅を購入する際に見かける、「耐震等級○相当」とは
新築物件を購入する際、工務店やハウスメーカーのWebサイトやパンフレットなどで「耐震等級3相当」 などの表記を見かけることがあるかもしれません。
これらの表記は、それぞれの耐震等級のそれぞれの同等の技術や建材を使用して建物を建築しているけれども、第三者機関による正式な等級認定を受けていない住宅の場合、この「耐震等級○相当」の表記が使われています。
耐震等級の認定は義務ではありません。
これから建物を建てる場合は建築基準法に基づき建てられているため、認定を受けていなくても「耐震等級1」を満たしていることになります。
そのためあくまでも自身の住宅の耐震等級を認定する場合は、任意で申請をし、第三者機関に認定をされ認定書を出してもらう必要があります。認定するかしないか、等級とどうするかについては住宅を購入する本人が決めることができます。
耐震等級の認定を受けるメリット

耐震等級の認定は任意ですが、認定を受けた住宅は、地震保険料の割引認定を受けることができます。
耐震等級1の場合は10%、耐震等級2の場合は30%、耐震等級3の場合は50%と割引率が大きくなります。
この地震保険の割引を受ける場合は、耐震等級の認定通知書、設計内容説明書など、住宅が各耐震等級を保有していることを示す書類が必要になります。
耐震等級を正しく知って、安心できる家づくりを

いかがでしたか?今回は住宅の耐震性能に係わる耐震等級についてご紹介しました。
大切な家族と幸せに暮らす土台には、その家で「安心、安全」に暮らせることがまず大切です。そのためにも地震への対策はしっかりとしたうえで、快適に暮らしたいものですよね。
コーケツホームズでは、壁量計算または許容応力度計算により、「耐震等級3」を確保し、プランのご提案をさせていただきます。
暮らしやすさだけでなく、生活の基盤となる安心を提供できる私たちに、住まいの悩みぜひ教えてください。お客様それぞれにあった暮らしのカタチをご提案させていただきます。